砂上の楼閣

 昨日エントリで「思い出の品を大体捨てた」と書いたのですが、辛すぎるので高校時代から使っている外付けHDDの過去データの復旧をしていたら、なんと、中高時代のブログの残滓が出てきました。(大学、院、社会人時代にmixiはてなで書いていた日記は復旧できなかった)
 流石に中高時代のものともなると「おれってこんな奴だったんだ」ってなるというか、懐かしくなる以前に何から何まで酷いのでその中の一つ(多分中学生3年のときに書いたもの)をご紹介したいと思い、恥を忍んで晒すことにします。

_________
砂上の楼閣(3月16日)(中学生時代の日記・復刻版)

人間の体がプールだとしたら、そこに一滴垂らしたくらいの量で人を死に至らしめる強い毒があります。
ほんの僅かの"異物"で人が死ぬなんて、凄い事だと思いませんか。
でも、そんなに強い毒だといって、分子レベルで考えたら肉や酒、日常口にする物と何ら変わりないものが殆んどです。
ただ結び付き方が肉や酒と少し、ほんの少しだけ違うだけです。

本当は"強い毒"なんてものはこの世界には存在していなくて、人間の方が微妙な均衡を保って、それこそ辛うじて命を取り留めているだけなのかも知れません。
でもそれはきっと、命だけじゃなくて、この世界の大概のものに当てはまると思うんです。

 

僕にはアツミっていう友人がいたんですよ。ミッチャンて呼んでたんですけど、彼と僕とは確かに親友だった。

(中略※当時はブログの中に唐突に私信を入れてました)

でもそんな僕らの友情はある日終焉を迎えます。それは"強い毒"が迫ってきていたからですよ。あれは中学2年生の時です。
(中略)
ミッチャンと毎日一緒に帰るようになったある日、僕の家から1分程の近所の公園でこう、非常に保存状態が素晴らしく素晴らしいエロ本を二人で発見したんですよ。
捨てたてホヤホヤ!みたいな。
中2ですからね、僕はパソコンの扱いも大分サマになってきて、動画も山のように持ってたんですけど、やっぱりエロ本には、殊に捨てられたエロ本には違う趣きがある。
自分で選んだ動画や買ったエロ本って、当然自分のチョイスなわけですから、そういうのって大体次の展開とか予想できるんですよね。
でも公園に落ちてるエロ本は、僕が普通見ないジャンルのものが大半なので、そういう今まで積み上げてきた経験が通用しない。
「キャリア」が役に立たないんです。
次のページを開く度に生唾を飲むわけです。鬼が出るか蛇が出るか。はたまた、誰とも知らない男のコンデンスミルクでパリパリにくっついたページが出るか。
そういう氷の張った湖上を歩くようなスリルがある。

とはいえ、友人の前でエロ本をニヤニヤしながら見る訳にはいかないですから「お前拾えよー」「お前が拾えよー」とか言いながらその場は終わったんですけど、家に帰って勉強してもそのエロ本のことが気になって集中出来ないんですよね。

暫くして心に決めるわけですよ。「よし、俺が拾う」とね。
公園まで1分、本気で走れば30秒もかからないでしょう。
僕は家に鍵もかけずに走りました。
それこそ風のように駆け抜けた。100mなら9秒代とか出てたんじゃないかな。
ガードレールを飛び越え、息を弾ませながら先刻エロ本を見付けた場所を見るんですけど、いやね、ないんですよ。ないの。エロ本がない。
ショッキングピンクのポップな書体で"女子高生監禁!"とか燦然と書いてあったエロ本がないの。

 エ ロ 本 が な い 。

皆さん都会人には理解できないと思いますけど、僕の住んでる所は関東圏でも指折りの田舎なんですよ。
回りには畑しかない。
他の中学校の生徒が僕らの学校を陸の孤島と揶揄するくらいの田舎なんですよ。
当然通行人なんて滅多におらず、いうまでもなく公園に来る人も滅多にいない。僕がミッチャンと別れてから拾う決心を固めるまで15分かかるかかからないか。
僕は犯人はミッチャンだという結論を導きだしたんです。

野郎やりやがった。

興味がない振りして俺と別れて、拾いに戻って来やがった。
次の日彼を問い詰めたんですけど、彼は一向に認めようとしない。自分の犯した罪を認めなかった。ムカついたから殴った。俺は殴ったよ。それはもう、鬼のように殴った。
そして女子に「コイツ昨日エロ本拾ってたよ!」とチクりました。

以来、彼は僕と一緒に帰る事はなくなりました。今までお互いにどんな罪も許しあってきたのに、高々エロ本一冊で数年の友情は、終焉を迎えた。
そう、やっぱり"強い毒"なんて存在しない。儚かったのは僕らの友情だった。最初から微妙な均衡を保ってただけだった。

絶対に揺るがないと確信するような強い気持ちさえ、実は砂の城のように脆い。この世界は全部そうだ。
砂を積み上げるのはとても時間がかかるのに、容易く崩れさってしまう。一粒砂を動かすだけで、ちょっと風が吹いただけで、崩壊してしまうかもしれない。
なのに、僕らはいつも何かを変えたくて、積み上げずにいられない。
(中略)
途中、風に吹き飛ばされ崩れるところを見て、僕の城に見切りをつけていなくなってしまう観客もいるだろう。
だけど最後には、上手に積み上げて見せる。その城を誰かに見せたい。
惜しまれて死ぬ為に、僕らは砂を積み上げている。いつ崩れるともわからない砂を。

_______
 以上です。
 いやコイツ全体的に何言ってるんだ?エロ本一冊で友達殴っといてコイツ、マジか?「俺は殴ったよ。」じゃないんだよ、クズすぎる!!