2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

何億年も前につけた傷跡なら残って

目を覚ますと、いつもの天井だった。 カーテンから白い光が差し込んで、塵の浮いた部屋の空気を照らしている。 嫌な汗をかいている。思わずため息をついた。 また、いつもの夢を見た。 * 中学の頃、ネットでは中高生の間で「前略プロフィール」というサイト…

死にたい。いつからか、そう思うようになった。

死にたい。いつからか、そう思うようになった。 自分が恵まれてないなんて思わない。 そりゃ上を見たらキリがないけど、やりたいように生きてきたと思う。その割には多くの人に愛して貰った。 そして世の中にはおれよりバカでブサイクで、どうしようもない人…

祖父の友人の話

1950年代の終わり、東京の新橋。 男は友人から流行らないバーを買い受け、経営を始めた。 それは後から考えてみれば半分酔狂のような雑な経営で、当然バーが赤字から回復することはなかった。 男には投機癖があった。 焦った男は、バーの経営を補填したい一…

見捨てられた町で。

神奈川県川崎市の海辺の工場地帯に、その集落はある。 第二次世界大戦中、日本第二位の鉄鋼業JFEスチール(旧日本鋼管)は、急増した武器需要に対応するため労働人夫として半島から朝鮮人を大量に採用し、日本に連れてきた。 いわゆる、徴用工である。 JFEは…

ここじゃない何処かの国に、希望なんてあるんだろうか。

先日、某企業から招聘を受けて上海に行ってきた。 上海に到着する飛行機から外を眺めていると、夕日で真っ赤に染まった海に点々と風力発電のタービンが突き刺さっていて、まるでエヴァンゲリオンのLCLの海に刺さった十字架のようで、幻想的な光景だった。 空…

宗教勧誘についていった

「君、だっちゃんだろ?」 大学の図書館の前で携帯を弄っていると、男に話しかけられた。長身で爽やかで、清潔な身なりをした如何にも好青年という出で立ちで、知らない顔だった。 どちらさまでしょうか、と応える前に男が続けた。 「わかんないか。S法律研…

出会い系のサクラだった

10年前、紆余曲折あって金欠になった。 知り合いのツテで仕事を紹介して貰えることになり、代官山駅近くにあるビルに出向いた。 三度もインターフォンと監視カメラのついた扉を経て、地下の一室に通された。 カーペット張りの床に、長机と椅子が幾つか置いて…